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Hadrien Feraudの忠告を意訳してみました

僕たちの同世代で、現代のエレクトリックベース界において大きな影響力を誇るフランス人のHadrie Feraud(アドリアン・フェロー)というベーシストがいます。

個人的にも、学生時代にYouTubeが初めて登場した当時(2006年ごろ)に突如その映像が流れてきて、当時22歳くらいだった彼の演奏を見て衝撃を受け、それからというもののその周辺のヨーロッパのベースプレイヤーたちに注目し出すきっかけにもなった人物です。

個人的にも彼の作品や演奏は大好きで、実際に日本やロサンゼルスなどで数回、彼の演奏を眼前で聴いたり、少し話したりなどもしたことがあります。

アドリアンフェローによる、忠告の投稿動画を意訳してみました

彼はインスタグラムではストーリーズなどで面白おかしく日常を投稿しており、リールやポストでは演奏の動画や音楽やアーティストにまつわるエピソードなどをアップしているのが基本でしたが

数日前に彼がおそらくカフェかどこかでシリアスな顔で改まって「マインドセットに関する話で、ずっと言いたかったことを言おうと思う」と言った感じで、8分間ほどにまとめた話を英語でしていました。

この内容が、非常にモチベーションや視座の高い、現在の彼を彼たらしめている考え方の基本であり

非常に素晴らしいことを話しており、共感する点が多数ありました。

個人的には英語で喋っているその内容を聴けばそれで十分で、もう見返さなくても良いかなと感じたのですが

日本でもアドリアンの存在は非常に影響力があり、多くのフォロワーや彼のような演奏スタイルを目指すような人も増えてきている中で

彼の「考えていること」は、英語(もしくは母語のフランス語)を分かる人か、雑誌のインタビューの翻訳を読むくらいしか方法がないのではないかと思いました。

そこで、僕自身も英語のリスニングに自信があるわけではないのですが、しっかり彼の言っていることを一度全て聴き取って理解したいという思いが起こり、そしてこの内容を、ベースを頑張っている人、それ以外でも

多くの音楽家や音楽家を目指す人にとって、何か一つでも刺激となり、考え方の参考にできる部分があれば

彼がこれを発信してくれた意味や、音楽全体にとって良い方向にみんなが「リアル」に向き合えるようになるためにも

有意義なことなのではないかと思いました。

元のHadrien FeraudによるInstagramへの投稿はこちらです。

英語で難しいので、日本語の字幕をつけました。

テキストにも起こしておきました。

以下、動画の中で話している内容の意訳です。

少年少女のみんな、アドリアンだよ

みんなが良い朝を過ごしてるといいな

朝といってももう11時19分だけど

(誕生日がどうたら〜〜)まあとにかく

そんなくだらないことは飛ばして

これはまた別の類のメッセージだ

この理由としては

たびたびDMが届くんだけど

SNSでね

あなたたちのうちの誰かからね

あなたが僕に送ってくれた

僕自身のソロを耳コピした動画とかを

僕がリポストしたりしないことについて

誰かが傷ついたり動揺したりしているようで

僕は今までにそのことについて

おそらく今までに一度も触れた事がないはずなので

今でしょ、ついに

というわけで簡潔にまとめてみるよ

割礼的にね

まぁ遅すぎたけどね

こういうことだよ

ある種の考え方やコンセプトは

僕にとってあまりよろしくない

自分はそういう考え方をしたこともないし

することもないだろう

言ってること分かってくれると思うけど

僕には理解できないし我慢できない

僕はそういう風に育った覚えはない

マジで、ほんと

はっきりさせておきたいのは

皆さんには感謝してもしきれないということ

フォロワーさんの中には

本当にキャリアの初期から

20年以上も前から知ってくれている人たちもいる

彼らには本当に感謝しているし

例え3日前にフォローし始めてくれたような人にも

同じくらい感謝している

その上で、話すよ

あなたがアーティストを尊敬するとき

そしてどうにかして彼らにアピールしたい時にね

もし彼らに何かを見てもらいたい時にね

例えばその人の演奏をあなたが耳コピした物ね

なんでもいいや、作曲されたものとか

ただの演奏の一部の断片とか、そういうの

彼らのメインの演奏楽器がなんであれ

もしくは、その人に関わるもの、なんでもだよ

あなたが本気で尊敬してる人、

目指してる人がいたとして

彼らとの間には「違い」があるでしょ?

で、その耳コピしたものを自分のスタイルに

置き換えていく時

アレンジを変えたり捻ったりするんだけど

実際のところ、耳コピで

彼らがやってることを耳コピしたくなって

けど完璧にできてないんだよ

2、3のミスがある

僕があなたたちから送られてきたソロの中で

ほとんどは正確なものはないでしょう

その元の演奏はそもそもが

その場で即興的に演奏したものだし

で、もしかしたらあなたはそのビデオを送ることで

僕が喜ぶんじゃないかと思ってるかもだけど

わかんない、それか盛り上がってくれるかな?とか?

とにかくなんかそういうことを

してくれようとしたとして

でもそれは十分じゃないんだよ

誰かのソロを個人的に耳コピするだけじゃなくて

そしてそれを私に送ってくる?

それは僕がやっていることとは違う

だって僕が演奏で見せたいのは

「自分がやっていること」であり「自分が言いたいこと」であって

すでに誰かがやったことや

すでに言われている事をしたいわけじゃない

けどまぁそれは別の話題か

けど、もし自分が本当に耳コピしたい、と思ったら

 信じて欲しいんだけど

もし送るにしても

少なくとも95%は超えているもの

もし僕が何か言うとしたら

「おい、見てみろよ

分かったわかった」

それから、どうにかして

抑揚が全然なかったりとか

アーティキュレーションとかフィールとか

そう言うのも問題だね

おそらく今まさにそれに常に取り組んでいる

最中なんだと思うけど、でしょ?

それはいいよ、だとして

そもそも正しい音が拾えてないんよ!

それは言うなれば、あなたが好きな

政治家のスピーチとかを一語一句コピーするとして

もしくは好きな俳優とかコメディアンとか

けど正しい言葉が拾えなかったとしたら

聞き逃したりしたら

そのメッセージが何を言いたいのか

ちゃんと分かってないってことになるじゃん、そうでしょ?

分からん、ほんとに分からん

例えば未だによく見かけるのが

ジャコのティーンタウンみたいな曲とかね

未だに見るんだよ、ちゃんと弾けてないのに

正しい音で弾けてない事も分かってないのに

それでそのうんこをアップするじゃん

SNS(社会)に!

これが本当に悩ましい

僕の考え方は非常にシンプルで

自分が100%理解したもの、いい?

それか、自分の能力の限界までやる

特に、もし僕が家で

そのウンコを見る時間があって

もし自分が何か動画をアップしようって思ったとして

それを何千人もの人が見るだろうって考えた時

なんで60%程度のものを出すの?

ましてやそれを

自分が尊敬している誰かに送るとしたら

「どんな反応をするだろうか?」って考えるでしょ

ましてそれが正確に分からないときは。

これが僕の疑問だよ

もし80%すでに仕上がってたとして

もっと頑張んなきゃいけないんよ!

もし自分の尊敬してる人に何かを送りたいとして

特にその場でそのプレイヤーが

すでにその場で即興で演奏しているソロを

完璧にコピーできていたとしても

それを送らなかったとしても

ぶっちゃけ、どうでもいいんよ

それを見ても別に燃えないし

そんな誰かわかんないような人が

なんか焦って演奏して

たいして良くもない

…わかるでしょ?言いたくなっちゃうよ

彼は自分が誰だと思ってるんだろう?

僕は僕だって分かってるよ、

僕はあなたが耳コピしたそのソロの張本人だよ

まぁ、こういう事だよ

言ったことは全部

保存しておく

ええと

僕が育ってきた時は

自分のケツを蹴り上げてた

自分のケツと向き合って

そうやってきたんだ、それでここまで来れたんだ

いじめっ子を健全な奴に戻してやる方法を知ってる?

「健全ないじめ」は

人々に驚くべき影響をもたらすけど

我々はそれに気付かない

循環から抜け出す必要がある

(???)な友達は

みんないつでも前向きだし

ケツに火を付けるんだ

君がやること全てに

君が言うこと全てに

あなたは美しい

そしてそれは素晴らしい事なんだよ

いや、全てが素晴らしい訳じゃない

人生においてこれが自分を持ち上げていく方法だよ

全てを明確にするには、何度もミスする必要がある

見えないところでね

地下室で、自分の部屋で、君が練習してる時でさえ

これが正確な自分になれる唯一の方法だよ

(あ、なんかなったw)

仕上がっていける唯一の方法は

ぶっちゃけ「失敗」する事だよ

けど、その方がよほどリアルだよ

練習して、ミスってる動画でもなんでも

むしろ全部上げちゃえば良いじゃん

その方がよほどリアルだよ

けど、もし何かをアップするとして

「正確であるべき」文脈のものをアップするなら

正確にやらなきゃダメだ

なぜなら「正確にやろうとして」いるのに

それができていないのなら、それは恥ずべきことだ

ただ、それを知って欲しいんだ

そして認めろ!

それだけよ、それが真実なんだから。

けど、救いの道はあるよ

君の周りに素晴らしいミュージシャンがいるだろう

もしかしたら君よりも上手くて

尊敬しているミュージシャンかもしれないけど

良いじゃん!

そして彼らを見かけた時にね

個人的にね。

聞けばいいじゃん?

「すいません!ちょっと2分だけ

お時間いただいていいですか?」って

「この動画を見てもらえませんか?

これを投稿するべきでしょうか?」

知らんけど

もしくは君の周りの友人にね

つまり、友人の中に

あなたより上のレベルの人を探してる人がいる

つまり君よりもレベルが高くて

一緒に絡んで良いことがありそうな、

そんな人

そういう人こそ

あなたが尋ねるべき人だ

他の誰でもないよ

友達でもないよ

質問するんだ!いつでも

自分より目上の人にどんどん尋ねていくことだ

それが良いよ

自分がやっていることにもっと感謝できるし

君が提供できることを誰がサポートするの?

なぜなら、僕は僕がいる場所にいるから

それは君自身のためなのか?

僕は自分のためにできることは自分でやったし

別にそれは誰かに褒められたくてやっているわけじゃない

けどそういうことはパッケージだ

ただ、こういったことに疲れてしまったんだ

そして人々も悩んでいる

そしてこの問題を分析する必要があった

だってこうして聞いてくれたら明らかだから

それから僕が最後に

取り上げたかったトピックとしては

けどこれは個人的な、そして純粋な特権なんだけど

動画など全般の「編集」についてだ

動画のアップに取り組んでいる人を見ると

全体的に非常に良くできていると思う

なぜなら元々雑な点があったとしても誰も気づかない

けど僕らはわかるよ!僕らもバカじゃない

編集でよく見せようとする誰もが

全ての音いっこいっこを

めちゃくちゃ均等にしようとしていて

全てのフレーズひとつづつを修正して

そしてゴミを量産して、、、

君は本物じゃない。それを知ってくれよ

君はそれを「リアルに」取り組んでいないんだ。

いい?

くそミスってもいいから8テイクでも9テイクでも

やればいいんだよ

それぞれのテイクで微妙に違いがあるはずだから

その中から良かったものを選べばいい

それでいいんだよ

以上だよ。

君が自分自身の事を一番わかっているはずだから

僕の言いたいことはこれで全部だよ

だってそうやって僕はここまでやってきたから

自分のケツを蹴るようにしてね

こうやって人々は僕に話しかけてくれたり

信頼してくれたりする

厳しいように聞こえるかもしれないけど

結局それが一番うまくいくんだ

できるだけ「リアルである」ことに努める、

ただそれだけなんです

フランス人の横柄なカエルくんが言ってたよ

だってそれが僕だから。

神に感謝…

けど怖がらないでね

だから、もし遊びたかったら一緒に遊ぼう

とにかく、今日はこれで言いたいことは全部

君の残りの日々が素晴らしいものであることを

願っているよ

はぁ、そう君自身の使命において、できる限り

リアルであることに忠実にね

ええと、それじゃあ、また会おうね

どこかのクラブか、マクドナルドでもいいし

パビリオンとか、ウォールマートとか。。

どこにでもすでに音楽はあるんだからね

僕が見つけられそうな所

だいたい分かるよね

おでこで考えてみてね

「正しくあるか、そうでないか」。

by アドリアンフェロー (2024年8月)

以上です。

個人的にも、彼には多大なる影響を受けた時期があったのは事実ですが、

まず感謝したいのが、彼が示してくれたエレクトリックベースという楽器での表現の可能性がこんなにも凄いのか、と衝撃を与えてくれた点で、それがきっかけでヨーロッパや海外の多くのベースプレイヤーに注目するきっかけとなりました。彼とも親交の深いドミニク・ディ・ピアッツァに2度会いにフランスにも行き、ドミニクからレッスンを受けましたが、音楽以上に懐の深い人間性、人生観に触れることができとても温かい気持ちになりました。

また、徳永兄弟といったフラメンコギターのアーティストと演奏を共にするようになり、スペインの音楽のバックグラウンドが自然と掴めるようになったのも、こういったヨーロッパのベースプレイヤーたちの中に自然と彼らのバックグラウンドから漂う音楽のエッセンスを掴み取っていけた結果なのではないかとも思いますし

その結果、世界のいろいろなところに行っていろいろな国の人たちと交流をしたりプロジェクトをしたり、様々な考えの面白い人間に会うことができるようになったのも、音楽という語法を少しづつ身につけることができたおかげなのです。

そういうきっかけを与えてくれるこういった素晴らしいプレイヤーが僕は大好きですし、本当にリスペクトしています。

どのように音楽と生活を結びつけるかは皆さん次第ですが、真摯に自分の音と向き合ってきた人の言葉にぜひ一度耳を傾けてみてください。

お読みくださりありがとうございました。

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