こんにちは、森田悠介です。
僕の演奏しているエレキベースという楽器は本来、フラメンコという芸術ではもともと、使われることのない楽器です。
近年でこそ、フラメンコを主体としたアンサンブルの中にジャズやクラシックや様々な西洋音楽の要素を盛り込み、多様な楽器でのアンサンブルが可能になったり、モダンになるにつれて表現の幅が広くなり、例えばバンド形式の場合はエレキベースが採用される例も、スペイン本国や周辺のヨーロッパ諸国でも多く見られるようになりました。
例えば、フラメンコギター界の革命児と言われたパコ・デ・ルシアのバンドはフュージョンのようなサウンドエッセンス、バンド編成でのライブを展開し、バンドにはエレキベース奏者のカルロス・ベナベンなどが在籍していましたし、ジャズの世界ではピアニストのチック・コリアが逆にスペイン音楽のエッセンスを取り入れ、ジャズの世界にも発展をもたらしました。
しかしながら伝統的な「フラメンコ」のコンクールに目を向けると
「歌」=カンテ
「踊り」=バイレ
「ギター」=ギター
この3つの要素がフラメンコでは最も重要とされていて、
フラメンコの殆どのコンクールでは、この3部門のみで行われています。
Cante = 歌
Baile = 踊り
Guitar = ギター(フラメンコギター)
30歳の誕生日を迎えた日に僕は、自身のバースデーライブを企画し、フラメンコギターの徳永兄弟たちも招いて大編成のバンドで自分の音楽を演奏していました。この企画の時に、運営などを影から手伝ってくれていた、クセの強い友人(仮称)がおりました。
コンサートを終えてからアメリカのNAMM showに行ったり、帰国してバタバタとフラメンコの新しいライブが始まろうとしていた時に、徳永兄弟を交えて、カフェで打ち合わせのさなかに何気ない会話をしていました。
森田くん、フラメンコのコンクールに出てみたら?
えっ!
う~ん、森田くん絶対でた方が良いと思うけどなぁ。エレキベースでも出られる部門のあるコンクールないのかな?
そういえば、一個だけあるよ、でかいやつ
調べてみよう!
ありました。
それが、スペイン最大のフラメンコのコンクール
「Cante de las Minas」
カンテ・デ・ラス・ミナス
Cante de las Minas Official Website (カンテ・デ・ラス・ミナス/オフィシャルウェブサイト)
El Festival Internacional del Cante de las Minas se viene celebrando año tras año ininterrumpidamente desde 1961. Cada mes de agosto se dan cita en el mismo los artistas más consagrados del mundo del Flamenco, así como aquellas otras jóvenes promesas o artistas emergentes que ansían alcanzar la codiciada Lámpara Minera, o cualquier otro de los prestigiosos premios que dicho certamen otorga en las categorías de cante, guitarra, baile e instrumentista flamenco, y que suponen un gran trampolín para su carrera.
ウェブサイトにはこのように書かれており、日本語に翻訳すると
カンテ デ ラス ミナスの国際フェスティバルは、1961 年以来、毎年途切れることなく開催されてきました。また、このコンテストがカンテ、ギター、ダンス、フラメンコ楽器奏者のカテゴリーで授与するその他の名誉ある賞であり、彼のキャリアの大きな出発点です。
クセの強い友人「森田くん、インストゥルメンティスタ(楽器奏者)の部門があるよ!これに出るなら僕、支援するよ」
これが2018年、5月ごろの出来事。コンクールは8月、資料の締め切りは7月。
クセの強い友人「これ、どこで開催されてるんだろうね?どれどれ、…ムルシアって書いてあるよ」
徳永兄弟「ムルシア…」「よりによってそんな端…」
端らしい。
クセの強い友人「YouTubeで、過去の優勝者が見れるよ。おっ、エレキベースもいる」再生ポチー
クセの強い友人「森田くん、これいけるよ!!!」
徳永兄弟「うん、ぜんぜん可能性あると思う」
僕「いける気がしてきた」
友人の後押しもあり、このようにエレクトリックベースという特殊な楽器でも挑戦できるコンクールがあるという事で、それまで「コンクール」というもの自体に挑戦した事がないということもあり、
このような受け皿があるコンクールに可能性を感じた僕は、ええい、ままよ。やってみよう。
という気持ちになり、大会に向けて大急ぎで準備をはじめたのです。
(Instrumentista = 楽器奏者 としてのエントリーが可能なコンクールはこのCante de las Minasだけで、フルートやサックスなどの管楽器、ヴァイオリンやエレキギター、ベースなどフラメンコギター以外の弦楽器、ピアノなどの鍵盤楽器など、幅広い楽器奏者に対してのエントリーを受け入れるカテゴリーがあります。)
とはいえ、
大会に資料を送ってエントリーをするところから全てスペイン語です。
スペイン語の分かる友人達に、大会のウェブサイトに記載されている要項を確認してもらうなどして
日々のライブ活動の合間を縫って、大会に必要な演目のポイントを徳永兄弟にアドバイスを受けるなどしていました。
しかも、4年前はオンラインの登録フォームが完備されておらず
「資料を郵送して下さい」との事。
演奏の動画を「DVDで」送らねばならず、ギリギリまで練習していたこともあって
締め切りが迫ってくるさなか、国際郵便EMSでDVDを送る事になりました。スペイン、ムルシアに。
国際郵便EMSでDVDを送り、届かなかったらEメールでなんとかしよう、と少々軽く考えていたのですが
郵便の追跡開始をしたら
日本からマドリードにDVD到着→マドリードからムルシアまで、なぜか数日動かない。。。
ということで、
しかも、既にスペイン行きのフライトチケットと
コンクールのための1ヶ月半のスケジュールの空きを確保していました。
DVDがムルシアに届かない、という事がわかったのは既にフライトの数日前でした。
(メールで演奏の映像を送ることも試みましたが、受理してもらえない様子)
とはいっても、ヨーロッパでの旅を既に組んでしまっていたので、
コンクールには出れない事が判明しましたが、スペインには実際に行って、
現地のフラメンコやアーティスト、文化に触れてこようと考えました。
そこで急遽、旅企画「6弦欧州旅」という企画に切り替え
スペイン、スイス、ドイツ、デンマーク、オランダを巡る旅に出ました。
※これらの様子はツイッターにて #6弦欧州旅 のハッシュタグにて様子がご覧頂けます。
↑クリックする事でTwitterにジャンプし、森田の2018年のヨーロッパでの様子が写真や動画などでご覧頂けます。
などが挙げられます。
しかし、逆転の発想で始まった2018年の #6弦欧州旅 ヨーロッパで得たものは
僕の音楽観や人生観に非常に大きな影響をもたらしてくれたおかげで、
必ずやまたヨーロッパに戻ってこよう、と決意をしたのでした。
これらの出来事を通しフラメンコ文化への理解や空気感を少しずつ感じつつ、同時にスイス、ドイツ、デンマーク、オランダとヨーロッパ諸国を廻り、様々な経験をして帰国。
しかし帰国後、また日本での仕事を続けていたところ2020年にコロナによるパンデミックが発生してしまったおかげで、ヨーロッパに再び渡航できるタイミングを掴むのが難しくなっていました。
その後2021年に入り、立て続けに色々な事が起こりました。
“このタイミングで、再びヨーロッパに行くことになりそうだ”
と確信をした僕は、以下のポイントに注力しました。
こちらです。
これで、ようやく今回の2022年のCante de las Minasのコンクール出場に繋がるわけです。
では実際のエントリーから出場に至るまで
色々と細かい流れがあるのですが、
筆者。ベーシスト。6年前に大変悲しい別れがあって
同じく大変悲しい別れをしたばかりの文化的な友人(仮称)とピーマンを食べる会をしていたら
クセの強い友人が現れ、フラメンコギタリストの徳永兄弟を紹介される。
そこでフラメンコに出会う。
筆者と同世代。
たいへん頭がよく、センスと文化的な造詣の深さを兼ね備えた経営者であり、
プロデューサー。
合理的な判断力と同時に、ピカチュウっぽい人懐っこさを兼ね備えている稀有な人物。
森田のソロプロジェクトCHEEZNESS (現在はこの名称を廃止)の最初期のライブから
運営をサポート、助言をしてくれている、たいへん貴重な友人。
筆者より少し下の世代。
たいへん頭がよく、センスと文化的な造詣の深さを兼ね備えたプロデューサー。
フラメンコギターを弾く事ができる。
日本を代表するアーティストをたくさん世に送り出してきた超プロデューサーである
川添象郎氏を父に持つ。
兄、健太郎。弟、康次郎。
フラメンコギター奏者。
スペイン、セビージャにて長きにわたりフラメンコギターを極め、様々なコンクールも受賞。
現在は日本に拠点を移し、2022年コロムビアレコードよりメジャーデビュー。
【宣伝】
フラメンコギター、パコ・デ・ルシアの師匠に当たる伝説のギタリスト「サビーカス」にNYでフラメンコギターを習い
日本に帰国後「フラメンコ舞踊団」をプロデュース、後に「YMO」「ユーミン」「カシオペア」「青山テルマ」など
数え切れないほどの大ヒットを生んだ伝説のプロデューサー、川添象郎さんの自伝「象の記憶」がリリースされました。