こんにちは、森田悠介です。
見出しです。
本日のブログでは、実際に僕が2022年のCante de las Minasに出場した際の準備についての流れ、
実際に僕がしてきた事を中心にお伝えしていこうと思います。
Cante de las Minas Official Website (カンテ・デ・ラス・ミナス/大会公式オフィシャルウェブサイト)
フラメンコ最大のコンクールにいきなり出場したのは、
「エレキベース」という楽器でエントリーできる大会がこれしか存在しないからです。
ウェブサイトを確認し、CONCURSOS つまり、「コンクール」のタブをクリックすると、出場するために必要な
規約など、情報が書かれた「bases」というpdf資料をダウンロードし、確認する事ができます。スペイン語ですね。
頑張って翻訳し、解読していきます。(第一の壁)
とは言っても、現在は翻訳ツールが発達しているので、かなり自力で頑張る事が可能です。
このように、
の4カテゴリーそれぞれで、応募資格の内容が分かれております。まずはこれを読み込む必要があります。
主な内容は以下の通り。
など、これらの重要な事が分かってきます。(2022年度の情報です)
なので、これらに向けて必要なものと、スケジュールを準備していきます。
この資料を準備しはじめた段階で、僕はオランダ、アムステルダムに滞在していました。
時期は、5月下旬からです。なので、6月いっぱいはこれらの準備に充てよう、と考えました。
もちろん、他のコンサート出演などの予定やリハーサルをこなしながら、です。
このCante de las Minas はそもそも「炭鉱の歌」という意味があり、この大会は1961年から61年間続いている、スペインで最も伝統あるフラメンコのコンクールです。
このスペインのムルシア州に存在する「タランタ」「ミネラ」といった、フラメンコカテゴリーの中でも特に
「鉱夫の嘆き」のようなものを表現したこれらの「歌」のエッセンスをいかに醸し出せているか、というのが審査の対象になります。なので、ただ「スパニッシュっぽい」というだけではダメで、いかにこれらの
「タランタ」「ミネラ」たる要素を理解して演奏できているか。
ビデオ審査の時点でその片鱗を見せることができていないと、決してセミファイナルに進むことはできないでしょう。
ぼくが応募をした「インストゥルメンタリスタ」というカテゴリーに出場するには
以下の資料を準備しました。
以下、順を追って解説します。
僕は、本番は6弦ベース1本のソロで挑む事を想定していたので、ソロでしっかり規定通りの内容を
演奏できるよ、という事を証明する必要がありました。
ブレリアとタランタというカテゴリーの演奏を準備し、締め切りに間に合うようにします。
※ブレリアは、フラメンコ特有の12拍子と速いテンポが特徴の、リズムを重要視した楽曲形式
※タランタは、本コンクールで重要な課題の一つで、テンポのフリーな即興を含む歌の要素がある楽曲形式
研究にあたり、友人のフラメンコギタリストたちから、重要なタランタのエッセンスなどについてアドバイスを受けます。
自分がある程度納得いける内容が固まり、練習をしっかりしたら、録画します。
よし撮影だ。
ビデオ審査といえども、背景やメイクも重要よ。セクシーさも大事なんだから。
そういえば昔から、「ベースはセクシーに弾け」ってよく言われたなぁ…(遠い目)
音はもうバッチリなんだから。メイクはこういう感じで…こういうアイテムを使うといいわ
良い感じのカメラと良い感じの音質で収録し、mp4データにしてDropboxにフォルダを作り、アップロード。
-登録フォームに、「Audio Visual資料のリンク」という欄があるので、そこにリンクを貼ります。
-今回はソロでの挑戦ですが、ぼくは自身の大編成のバンドでもフラメンコに影響を受けた作曲を披露しているので、さらに自身の音楽性を知ってもらうために、年末の文化庁のサポートで収録をすることができた大編成のライブビデオも合わせて同封しました。
※こちらはかつて、コンクール出場のアーティストをサポートした経験もあるパーカッショニストの
モイセくん(アメリカ在住)が事務局に質問をしてくれて、「大編成のビデオもあって大丈夫」との事でしたので、同封。
これらが、動画から伝わることが重要なようです。
このセクションは少し厄介です。
日本の銀行の残高証明は日本の銀行において簡単に発行してもらうことが可能です。
(しかし、英語のものは発行に少し時間がかかるので、旅に出る前に余裕を持って準備をしておくことが必要です)
銀行口座の残高証明がなぜ必要かというと、コンクールに出場が決定したアーティストに支払われる宿泊費の補填、及び賞金の振込のため、口座を本人が持っているかの証明に必要との事です。
また、大会のエントリーフォームに、銀行のIBANコードを入力せよ、という項目があります。
IBANコードとはヨーロッパの銀行が持っている銀行識別コードのことで、日本の銀行にはこれが存在しません。
代わりにSWIFTコードというものはあるのですが、オンラインの登録フォームにこのコードを入れても、システムの都合上、受理できないため先に進めないというエラーが発生。
僕はヨーロッパの銀行の口座を持っていないため、かなり焦りましたが
対策については資料の郵送で解決できましたので、後述します。
これは、いわゆる英語でいうところの「cv」つまり経歴書のようなものを用意する必要があります。
また、プロフィール写真を送るフォームがあるのでしっかり顔の分かるものを用意するとよいでしょう。
何に使用されるかこの時点では分からないので、なるべく写りの良いものを選ぶと良いでしょう。
(この写真が、公式に使用されることはありませんでした。)
経歴書についてですが、相手はスペインのコンクールなので、審査員が必ずしも全員英語を理解するとは限りません。せっかくのプロフィールも、伝わらなくてはムダです。
〜オランダ・ハールレムにて〜
スペイン語に翻訳してくれる人が必要だなぁ
知り合いのホセがスペイン語ネイティブだわ、会いに行くと良いわ
なんと!ありがとうございます!
アムステルダム在住で、スペイン語がネイティブのJoseという方を紹介していただき、
ぼくが英語で用意したcvをスペイン語のネイティブな表現で完璧に伝わるように翻訳をして頂きました。
ここまで揃ったら、
●氏名
●演奏予定の曲目
●伴奏ギタリストの必要の有無
●バンドメンバーの有無
●DNI / NIF / NIE
●IBANコード
などを入力せよ、という項目があります。
ここで、
●DNI / NIF / NIE
とは????という壁にぶち当たります。(第二の壁)
これは、スペイン国民の持っている、いわば「マイナンバー」のようなもので、あらゆる公的手続きに必要な身分証明書。
外国人であるぼくが当然持っているはずがありません。
ここで焦ってGoogle検索。
詰みました。
外国人でも、NIEを発行してもらうことが可能。しかし、
今からスペインにいって発行してもらうのか?
というカオスな状況になってしまい、そんなことをしている間に締め切りが過ぎてしまいます。
これでは前回の二の舞いで、またエントリーできずに終わってしまう…
という恐怖がよぎる。
試しに、それ以外のフォームを埋めた状態で、この
これらを入力して、エントリーボタンを押してみます。
すると。。。。。
ここから、一向に画面が進みません。
これはダメだと思い、事務局に電話で問い合わせることにしました。
〜アムステルダムにて、会話〜
こんにちはJose、かくかくしかじかで、助けて!
オーケーゆうすけ、よく来たね。全て問題ない。電話してあげよう。…もしもし
もしもしラスミナス財団です
日本人のベーシストがコンクール参加したい。日本から来ているんだ。資料は揃ってるがIBANとNIEは存在しない。代わりにパスポート番号と日本の銀行コードで登録が受理できるよう掛け合ってくれないか。
…事情は承知した、それでは許可しましょう。この人物へ宛てた手紙を添えて郵送してください。…
ゆうすけ、オーケーだ。許可を取った。会話も録音した。
いや、つよっ!
君の経歴書もスペイン語に翻訳しておいた。これらをプリントアウトして、郵便局へ急げ!
この御恩は一生忘れません
オーケー、グッドラック!
この時点で、締め切り5日前。
急いでこれらの書類をプリントアウトし、必要事項を書き込み、郵便局へ駆け込みました。
ここはアムステルダムだったので、
「EU内で、ムルシアまで速達だったらいつ届く?」
「このエクスプレス便なら、2日あれば届くよ。」
との事で、€43.95する「エクスプレス便」を選び、専用の封筒に入れてもらいました。
受付のお兄ちゃんに「This gonna change my life!」と伝えました。
無事に郵送完了です。本当にお疲れ様でした。
ここからは、
書類が届いたのか、そしてエントリーできるのか気が気ではありませんでしたが、
待つことしかできない。
iPhoneのWhat’s Appにメッセージが。
「大会運営のジョアンナです。(英語)
あなたの書類が無事届いて、無事にエントリーが済みましたよ!
これからは私が担当になるから、分からない事があったら聞いてね」
とのメッセ。
歓喜!!
この時点で、締め切り2日前にてエントリー完了。
しかも、このジョアンナという人は英語が分かるので、大変やりとりがスムーズに。
これで、次のステップに進めるというわけです。
「セミファイナルの条件」
-さて、本来ギター、歌、踊りのカテゴリーでエントリーした場合は、スペインの各エリアにて
予選と言いますか、実地テストが行われ、それをクリアするとセミファイナルに進めるようです。
しかし僕のアプライしたインストゥルメンティスタのカテゴリーでは、
実地テストはなく、動画と書類での審査のみによってセミファイナリストが選抜されます。
-メインの歌、踊り、ギターに比べたら、圧倒的に応募してくる数は少ないとは予想されますが、
果たしてどれくらいの数の応募があったのかは、今でも見当がつきません。
-とはいえ、このカンテデラスミナスの大会中はセミファイナルが3日間、ファイナルが1日。
どの日もチケット代をとってお客さんがたくさん入るという興行と化しているので、
おそらく生半可な演奏ではステージに立たせてもらえないことが想像されます。
7月に入ってからも、オランダでの教会でチャリティコンサートの予定が入っていたり、ドイツに出かけたり、
ロンドンでHYPER JAPANというフェスに出演するスケジュールがあったので、何もせずに過ごす訳ではないのですが
結果が分かるまで、そもそもスペインで演奏できるのかどうかすら分からない、という状況なので
ひたすら待つしかありません。
何度か英語アシスタントのジョアンナにメッセを送り、「いつ頃わかるのか」などと訊いてしまいましたが
彼女に決定権はないので、しばし待て、と。
〜余談〜
いくつか写真を送ってくれないか。アーティスティックに加工をしてあげよう
えっ!ありがとう!
…なぜなのか。
オランダでのコンサートとドイツでの休暇を終え、再びアムステルダムで、39℃もの猛暑を記録し、フラメンコギターを弾く友人と湖で暑さを凌ぎ、まったりとジムに行き過ごしていました。
再び、ジョアンナからiPhoneにメッセージが。
「こんにちは、ゆうすけ。あなたに素晴らしいニュースがあるわ。あなたはカンテ・デ・ラス・ミナスの競技者に選ばれたわ。あなたは8月4日に演奏する事に決定。少なくとも前日にはこの近くに来ている事をおすすめするわ。おめでとう。私があなたの必要なあらゆる事をサポートするわ。ジョアンナ」
筆者。ベーシスト。6年前に大変悲しい別れがあって
同じく大変悲しい別れをしたばかりの文化的な友人(仮称)とピーマンを食べる会をしていたら
クセの強い友人が現れ、フラメンコギタリストの徳永兄弟を紹介される。
そこでフラメンコに出会う。
2022年5月から7月までオランダに拠点を移し、オランダ人プロ文筆家おじいさんのアパートに滞在しつつコンクールの準備を進める。
オランダのアートユニット、Japone Artistsの創始者でありソプラノシンガー。
ヨーロッパ在住歴が長く、現在はオランダ・ハールレムに在住。
ファッション、ビジュアル面においてのアート文化にも造詣が深い。
ペルー出身。Japone ArtistsのアシスタントマネージャーであるAndriesの友人であり、
スペイン語、英語、オランダ語が堪能である。元プロフェッショナルのカメラマンであったが、 不慮の事故により視力を失う。しかし持ち前の不屈の精神で新たな仕事を開拓し、ギターを独学で習得、毎朝5時の散歩の習慣だけで体重を20kgも落とすなど、成功哲学の持ち主。
この場を借りて、改めまして多大なるサポートをしてくれましたお2人をはじめ、周りの人々に感謝いたします。